僕が初めてヨーガ·エクササイズと出会ったのは、高校を卒業したあと、3年制の演劇専門学校に入った年の3学期でした。クラスの仲間の一人が、突然魅力的な動きをクラスの表現練習の中で見せたのでした。ギリシャ彫刻のように美しく、シンプルで、日常的な動きとは全く異なるものでした。その友人に、「動きがとても素晴らしくなったけど、何か習い始めたの? 」と聞いたら、彼は「僕はパントマイムを習い始めたんだ」と答えました。彼の先生は、ジャン·ヌーヴォというフランス名の日本人でした。早速僕は千歳烏山に住んでいたジャン·ヌーヴォ先生の門を叩きました。
先生の自宅兼稽古場は、千歳烏山駅から徒歩で30分くらいの場所にありました。それほど広くはない稽古場で、先生と生徒一対一の稽古で、まず最初に8つくらいのポーズを先生の指導で行いました。そのポーズの一つが逆立ちでした。僕は逆立ちができず、先生に支えてもらいながら実践しました。それらのポーズを終了したあと、パントマイムの稽古に入りました。
先生との稽古は一週間に一回で、3か月過ぎたころ、最初に行うポーズが、どうもヨーガと呼ばれるポーズらしいことを知りました。その当時は本屋さんにはヨーガの本など全く販売されてはいませんでした。また、ポーズが僕の身体に大きな影響を及ぼし始めました。当時僕の身体はとても固く、子供のころから虚弱で病気がちでした。その身体が、少しづつ氷が解けるように徐々に柔軟になり、身体内の毒素が、少しづつ抜けていくのを感じるようになりました。それは生れて初めての体験で、これは何だろうと、ポーズの効果に引き付けられ始めました。
半年経過したころ、先生との稽古を終了し、千歳烏山駅に徒歩で帰る途中、その帰り道は川や森や農場のある田舎のような風景でしたが、突然自分が空や森や川と一つになって生きていた、小さかった頃の自分が蘇りました。自由で自然でいつも楽しかった子供の頃···僕はしばらく立ち止まり、その自然な解放感に圧倒されました。そして、先生の教室に行くときの自分と帰るときの自分の大きな変化に気づきました。そして、その原因はヨーガのポーズだ、と直感しました。
そのころから、僕はきっと一生ヨーガと関わることになるだろうと深く感じ始めました。そしてそれは現実になりました。その後東京でインド人のヨーガ教師と出会い、インド哲学を知り、さらにインドに毎年通うようになり、75歳の現在もヨーガと深く関わり続けています。